「啐啄の機」 No.21(2023年2月1日)

2023.02.01

 新しい景色を見るために ~ 受験生の皆さんへ
 
ヒマラヤ山脈のエベレスト(現地名「チョモランマ」あるいは「サガルマータ」)といえば、標高8,848mを誇る世界最高峰の山です。今でこそ登山ルートが整備され、近年では年間の登頂者数が500人を超えることも珍しくありませんが、1900年代半ばまでは多くの登山家・冒険家たちの挑戦を拒み続けた前人未踏の険峻でした。
 
そのエベレストの登頂に初めて成功したのは1953年のことでした。今からちょうど70年前、人類は地球上で最も高い地点に立ったのです。ネパール人のテンジン・ノルゲイとともにエベレスト登頂を達成したニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリー卿は、次のような言葉を残しています。
 
「我々が征服したのは山ではない。我々自身だ。」
("It is not the mountain we conquer but ourselves.")
 
ヒラリー卿のこの言葉は、「たとえどんなに厳しい挑戦でも、それを成功させるためには自分自身との戦いに勝たなくてはならない」ということなのでしょう。エベレストの山頂に立ったとき、目の前にはそれまで人類が見ることのなかった景色が広がっていたはずです。二人はいったいどんな気持ちで、その壮大な景色を眺めたのでしょうか。
 
昨年のサッカーWCにおいて、日本代表チームの森保一監督が「新しい景色」という言葉を繰り返し用いていたことは記憶に新しいところです。人は、これまでに成しえなかった大きな目標を達成したとき、心境に大きな変化が訪れ、目の前の景色がこれまでと違ったように映るのかもしれません。
 
受験生の皆さん。人は何かに挑戦し努力することで高みに登り、これまで見えなかったものが見えるようになります。それは誰かが用意してくれるものではなく、自分自身との戦いです。自分の足で一歩ずつ進むからこそ、その先には今まで見たことのない、最高の景色が広がるのです。
 
受験生の皆さん。これから皆さんは大きな試練に挑もうとしています。そしてそれは、自分自身への挑戦でもあります。これまで見たことのない新しい景色を見るために、最後まで全力を尽くして頑張ってください。私たちは皆さんを応援しています。