「啐啄の機」 No.38(2024年9月2日)

2024.09.02

ガネーシャの戒め
 
私の愛読書の一つに、2007年に発表された『夢をかなえるゾウ』(水野敬也作 文響社)があります。この本のタイトルにある「ゾウ」というのは、象の頭を持つインドの神ガネーシャのことです。
 
この作品の中でのガネーシャは、関西弁をしゃべるちょっと変わった神さまとして登場し、主人公に対して夢をかなえるためのさまざまな課題を与えます。そして、主人公はそれらの課題を一つひとつクリアしながら、少しずつ自分の夢に近づいていくという物語です。
 
このように『夢をかなえるゾウ』という本はたいへん興味を引かれる内容で、現在までに続編を含めた5冊が刊行され、累計430万部を超えるベストセラーとなりました。
 
そもそもインドの神様が関西弁をしゃべるというのも妙なのですが、そのガネーシャの出す課題にしても、「靴をみがく」「コンビニでお釣りを募金する」「食事を腹八分におさえる」…などといったように、「夢の実現とどのような関係があるのだろう?」と首をかしげるものばかりです。
 
そうしたガネーシャの課題の一つに「決めたことを続けるための環境を作る」というものがありました。そして、この課題についてガネーシャは主人公に向かって次のように説明しています。
 
「『今日から変わるんだ』て決めて、めっちゃ頑張ってる未来の自分を想像するの楽やろ。だってそん時は想像しとるだけで、実際にはぜんぜん頑張ってへんのやから。(中略)本気で変わろ思たら、意識を変えようとしたらあかん。意識やのうて、『具体的な何か』を変えなあかん。具体的な、何かをな」
 
人間は意思の弱い生き物です。かくいう私自身も、夏休み前にはいろいろな計画を立てていましたが、結局は猛暑に負けてその半分も実行できませんでした。たしかにガネーシャの言う通り、頑張っている未来の自分を想像するだけでは何も変わることはありません。具体的な行動を起こすことによって、初めて人は変わること(つまり成長すること)ができるのでしょう。
 
現在、我が家のリビングにはガネーシャ像を飾っています。この夏、私は生徒たちと一緒にカンボジアでの研修旅行に行ったのですが、ふと立ち寄った露店でこのガネーシャ像を見つけました。それはずいぶん時代を帯びた木像で、ひと目見て妙に心惹かれるものがあり、買って帰ってきたのでした。だから、今は毎日このガネーシャ像に向かい、自分の怠け心を戒めるようにしています。
 
本校では今日から新学期が始まります。私自身もさらに成長できるように、生徒の皆さんとともに日々行動していきたいと思っています!

ちなみにカンボジアでの生徒たち様子は以下の公式SNSでご覧いただけます。