「啐啄の機」 No.40(2024年11月1日)

2024.11.01

知識と体験
 
長く続いた猛暑が緩み、少しずつ秋らしさが漂い始めた10月の休日、思い立って八王子市と相模原市の堺に位置する陣馬山(じんばさん)に登ってきました。陣馬山は都心からのアクセスが良いうえに、登山道が整備された低山(標高854.8m)で、毎年多くの人が訪れる人気の山です。

相模原市側の登山口にある石碑です。

この日は好天に恵まれたこともあって、山頂はたいへんな賑わいでした。陣馬山の由来は諸説ありますが、一説には戦国時代に武田氏が北条氏との戦いで陣を張ったことによるとも伝えられています。(滝山合戦)

山頂にある白馬像は陣馬山の象徴です。

同じ景色を戦国武将も目にしたのでしょうか?

秋の気配に誘われて急遽出かけた陣馬山でしたが、山頂に吹く風はたいへん気持ちよく、その日はとても満ち足りた気持ちで帰ってきました。(ただ、覚悟していたこととはいえ、翌日襲ってきた筋肉痛には難儀しましたが…)

ところで、この山登りのように、実際に自分自身で体験しなければ感じることのできないことは世の中にたくさんあります。このブログでも、陣馬山の位置や高さ、歴史的背景などは知識として皆さんに伝えることができても、私が頂上に立ったときに感じた清々しさは、どんなに言葉を尽くしても伝えることは難しいと思っています。

知識は体験と結びつくことで感動になります。それは山登りだけではなく、学校でのさまざまな活動にも言えることです。たとえば、教室で身に付けた英語が初めて外国の方に通じたときや、教科書で習った理科の法則を実験によって確かめたときなど、きっと皆さんは感動したのではないでしょうか。

現代ではICTの発達によって、スマートフォンが一台あればいくらでも知識を得ることができます。その一方で、実際に体験するためには自分自身の体を動かさなくてはなりません。目で見て、耳で聞いて、手で触れることが必要になります。そして、そうした体験を通すことで、初めて知識は感動を伴うものとなります。それがいわゆる「生きた知識」というものなのでしょう。

学校は皆さんに知識を与える場であるとともに、さまざまな体験の機会を用意しています。ですから、皆さんはこれからの学校生活の中でたくさんの感動の体験を積み重ねてください。そうした活動を通して、多くの人が心を豊かにしてくれることを願っています。