学校にはなんでもある ~ 「宙わたる教室」より
現在NHKで放映されているTVドラマ「宙(そら)わたる教室」は、伊予原新氏の同名の小説を原作としています。都内の定時制高校を舞台に、さまざまな事情を抱えた生徒たちが、かつて惑星科学の研究者だった藤竹先生(劇中では窪田正孝さんが演じています)の導きによって、科学部としての活動をスタートするという物語です。
それだけでも十分魅力的な筋書きなのですが、原作のあとがきによると、この物語が実話をもとにしているというのですからますます興味が深まります。もうしばらくこのドラマは続くようなので、今後の展開がとても楽しみです。
ところで、この物語の序盤でたいへん印象的な場面がありました。
ある日、授業をしているところに不良少年たちがやってきました。そして、「こんなところ(定時制高校)に通うのは時間の無駄だ」と言い放ちます。そんな彼らに対して藤竹先生は静かにこう諭すのでした。
「無駄にするかどうかは自分次第です。ここにはなんだってあります。教師にできるのは、場所を用意して待つ、ただそれだけです。ここは諦めたものを取り戻す場所ですよ」
学校にはなんでもある──藤竹先生のこの言葉は、私の胸に深く刺さりました。そして、この言葉を耳にしたとき、私は今年の夏に生徒たちと一緒に訪れたカンボジアでの研修旅行を思い出しました。
カンボジアという国は地域格差の大きいことで知られています。特に農村部では貧困が進み、多くの人が苦しい生活を強いられています。そして、そこで生まれた子どもたちの多くは教育を受けることもままならず、したがって貧困から抜け出す手段を持ちません。
けれども、カンボジアにはそんな農村部の小学校で日本語を教えるボランティアスタッフがいます。この夏、私たちは現地スタッフの皆さんのお手伝いをするために、カンボジアを訪れたのでした。きっとカンボジアの子どもたちは、学ぶことで自分の未来を変えることができると信じて、日本語を勉強しているのだと思います。
学校にはなんでもある──藤竹先生のこの言葉は世界に共通する真理だと思います。学ぶということは、私たちが持っている無限の可能性を実現するための唯一の手段であり、私たちは学ぶことでしか未来を変えることができません。そして、カンボジアの子どもたちにとって日本語を学ぶことは、今の生活から抜け出すための第一歩なのです。
学校にはなんでもあります。それは、カンボジアでも日本でも、どんな学校にでも言えることです。そんな学校での学びを通して、ぜひ皆さんにも、未来へと続く道を見つけてほしいと思っています。
本校の図書館です。
まさに皆さんの未来が詰まった場所ですね。