カンボジアボランティアツアー報告

8月1日(水)～7日(火)に高校1年生と2年生の希望者を対象としたカンボジアスタディツアーを開催した。このプログラムは明法高校との共同開催で本校からは16名が参加した。インフラが整備されていない村の小学校で日本語と英語の授業のサポートをする国際ボランティアツアーだ。この小学校はシェムリアップ州のトンレアップ村にあり，シェムリアップ州の都市部には世界遺産アンコールワットがあり，子どもたちは外国語ができれば将来観光業の職を得て貧困から抜け出す可能性も高まる。日本語のネイティブである本校の高校生が日本語を教えるということは，現地の子どもたちの選択肢を増やすことにもつながる。

今回のボランティアツアーでは，電気もガスも水道も通っていない村の家庭にホームステイし，不便な生活を直接体験し，そのような環境でも将来の目標を持ち前向きに勉強に取り組む子どもたちと関われたことは大変意義深いことであった。本校の生徒たちも授業でのサポートをしたり，休み時間には子どもたちと思い切り一緒に遊んだりして大いに貢献した。しかし，今回のスタディツアーの意義は別の点からも語られるべきだと思う。それは以下の3点にあると思う。

1点目は，カンボジアがいまだ最貧国の一つになっている理由を歴史的・経済的観点から考えられたことである。村の小学校の創設者で現地スタッフをしているヒム・サラ氏や，観光の際に日本語ガイドを務めてくれたマン・サルン氏からは多くの話を聞くことができた。クメールルージュの体験談，今も大人たちが出稼ぎでタイまで行き，同行した子供たちや残された子供たちは教育の機会を奪われていること，7月下旬に行われた選挙の話などを聞いた。現在も中国からカンボジアへの投資額は国別シェア1位になっているが，その援助は全くと言っていいほど村には還元されていないように思える。

2点目は，英語を学習する理由を様々な視点で考えられたことである。私たちはなぜ英語を勉強しているのか。今回，村の中高生や村人たちに質問をする時間をもつことができた。クメール語から英語に通訳してもらい理解することが多かった。また地雷博物館ではプロジェクトマネージャーを務めるアメリカ人のビル・モース氏と話す機会を偶然持つことができた。地雷除去の現状，アキ・ラ氏や彼が養子にした子供たちの話，地雷除去寄付団体，学校運営にかかる費用など英語で語ってくれた。また，先に述べたように，現地の子どもたちが英語を勉強する理由についても考えることができた。観光業に就くためばかりでなく，大学では教科書がほとんど英語で書かれているため，より高度な勉強を続けるためにも英語が必要となる。

最後はやはり，現地の課題を肌で感じ，今後私たちはどのようなソーシャルアクションを起こせばよいかを考えることができたのは得難い経験であった。たった3日間ではあったが，不便な生活をする中で様々なことを高校生たちは感じ考えたはずだ。村での滞在最終日に，村の中高生をはじめ村人たちと話す機会を得た。我々からもたくさんの質問をした。「部活動はありますか」「どんな科目が好きですか」「将来の夢は何ですか」「授業で寝ている人はいますか」「どんな時に幸せを感じますか」「村長はどのようにして決めますか」「なぜ電気を引かないのですか」「識字率は何％ぐらいですか」などなど。最後に村人のひとりから「シェムリアップ市内のようにビルに住む生活をしたいが，どうしたらそのような生活ができますか」という質問をもらった。その日の午後，一人ひとり村の課題を考え，そうなってしまっている理由と解決策を考え高校生同士で共有した。興味深い発表がいくつもあった。最終日帰国前には，シルクファーム，アンコールクッキーといった現地の雇用創出のためのビジネスを見ることもできた。インターネットが普及している現代，今回参加した高校生が実際にソーシャルアクションを起こしてくれる生徒が一人でもあらわれてくれればと期待したい。

研修の行程
1日目…夕方到着後シェムリアップ市内のホテル泊
2日目～3日目…トンレアップ村でホームステイ
　小学校で外国語（日本語と英語）の授業ボランティア
　現地の高校生とディスカッション（高校生活の違い）
　村内散策（日の出，日没鑑賞）
　孤児院見学
　満点の星空鑑賞
４日目…トンレアップ村でホームステイ
　小学校で外国語（日本語と英語）の授業ボランティア
　トンレアップ村小学校の奇跡（創業者ヒム・サラ氏からの話）
　村長さんをはじめとした村民とのディスカッション（村の課題など）
　SDGs Pilot Diploma Program（「村の課題を解決」ワークショップ）
５日目…シェムリアップ市内観光①
　アンコールワット遺跡群観光
　オールドマーケットで買い物
　アプサラダンスショー鑑賞（夕食時）
６日目…シェムリアップ市内観光②
　キリングフィールド見学
　シルクファーム観光
　カンボジアクッキーズで買い物
　地雷博物館見学など
　シェムリアップ空港へ
（日本時間7:30成田空港着）